庄司さんが病室から出ていき、数分後に看護師さんが来て点滴終了。

早く帰らなくちゃ。そこまで遅くはないから、お母さん大丈夫だとは思うけど。


いそいそと帰り支度をし、病院を後にする。

外は夕日のオレンジ色で染まっていた。

その眩しさに左手を軽く目の上にあげ光を遮り、少し顔をしかめる。


「……」


あまりにも平和な風景に、さっきまでの地獄のような出来事が夢みたいで、まるで現実味がない。


……わたし、助かったんだね。これからは怯えることなく登下校できるんだね。

もうあんな恐ろしく怖い思い、しなくていいんだよね。


うっすらと目に涙が浮かぶ。


「…深瀬くん…」


立ち止まり振り返って病院を見上げた。

この大きな病院の中に深瀬くんが眠っている。

わたしの為に、ボロボロになった深瀬くんが。


「…ごめんね、深瀬くん」


いつの間にか頬に伝っていた涙。

手首に拘束された痕が残っている右手で拭い、家へ向かって歩み始めた。