バカ咲良。金沢くんの前で泣いちゃだめじゃないの。


「…わり。こんな時、何て言ってやったらいいかわかんねぇ。咲良が無事で良かったって思うし、澤田が憎くてたまんねぇとも思う」


金沢くん…。


思わず顔を上げ金沢くんを見ると、さっきより落ち着いては見えるものの、かなり苛立っているようだった。


「ま、澤田は深瀬が許さねーだろうから俺が行く必要ねぇけど、ムカついてしょうがねーわ。マジで『される前』だったんだよな?」


普段の明るい金沢くんと打って変わった表情。ここまで重い雰囲気の金沢くんは初めてだ。


「…うん。だから大丈夫だよ。ありがとう」


これ以上金沢くんに気にさせちゃだめだ。笑わなきゃ。泣いてなんかいられない。


「もっと早く助けられなくてわりぃ」

「そんなことないよ。助けに来てくれただけで本当に嬉しいよ。ありがとうしか言えなくて、逆にごめんね」


金沢くん、いい人すぎでしょ。わたしを助けてくれた上に謝るなんて。

また涙腺緩んじゃうじゃないの。


「──っ!あ゛ー!くそっ!深瀬に任せるんじゃなかった!」

「え?」


急に髪の毛をかきむしり悔しそうにする金沢くん。一体どうしたんだ。


「俺が澤田をぶん殴りたかっ!!あそこにいる全員、ぶちのめしたかった!ちくしょー!!」

「か、金沢くん…」


わたしの為に…って、それだけじゃないか。調子に乗っちゃいかんね、うん。


──ん?『深瀬に任せる』?