「そうまでしないと深瀬くんに勝てないの?北栄のトップが、名前ばかりでヨワカスじゃないの」

「──」


一瞬、教室内が静まり返った。


皆の視線がわたしに集中する。


「てめぇ、何ほざいてんだ!」

「この女!死にてぇのか?!」


周りが騒ぎ立てるのをよそに、澤田はわたしを見て薄く笑った。


──やっぱりこの人、おかしい。


「だってそうでしょ?やることも汚いけど、考えてることはもっと卑怯で小汚い。これじゃ深瀬くんに一生勝てないわ」

「この野郎!!」

「黙れ!!」

「やめろ」

「──」


数人がわたしに手を出そうとした時、澤田のきつい声が響いた。

そして他の人より一歩前に出て、わたしとの距離を縮める。


「なんでだよ、こいつ…」

「ねぇ、なんで俺が深瀬に勝てないの?」

「…なんで?」

「まぁケンカで言えば深瀬の方が若干上ではあるけど、俺、ケンカ自体そんな好きでもないし、それ以外で俺があいつに劣っているところなんて一つもないでしょ?」


口角を上げながらも、冷徹な表情をわたしに向ける澤田。


随分自信に満ち溢れているんですね。

だからこそ深瀬くんに完全に勝つことができなくて許せないんだ。


「…逆でしょ?」

「逆?」

「あなたが深瀬くんに勝っているところなんて一つもない」