「──」

「深瀬をゴミのように捨てて、俺の奴隷にでもなると約束しろ」


急に真顔で、冷たく射抜くような眼差しを向ける澤田。


胸を鋭く刺されたんじゃないかと思うほどの感覚。


さっきまでとは違う声音に、動揺を隠せない。


「や…約束って…」

「それとも深瀬の目の前で俺に抱かれる?面白そうじゃない?あいつ、どんな顔するかな?想像しただけで笑いが止まんない!ははははは!」


…な…。なんなのこの人…。


発想がありえない。異常だよ。尋常じゃない。


「どうしてそんなこと…」

「決まってるでしょ。あいつの惨めな顔、姿が見たいんだよ。あいつに絶望感、劣等感を味わわせて、そして完全な負けを認めさせたい」

「…その為にわたしを…」

「深瀬には明確な弱点がなかったからね。君という弱点が深瀬にできたことに心から感謝するよ」


弱点…?

そんなの、まともにやったら勝てないって言ってるのと同じじゃない。


そうまでして深瀬くんに勝ちたいの?ああ、北栄の名前ががた落ちとか、先輩方につめられてるんだっけ。


くだらない。


…にしても。

こんなことしてる時点で正当派じゃないのはわかりきっているけど、深瀬くんがちゃんと相手にしないのもわかる気がする。


見た目は存在感があるのに、人を惹きつけるような容貌なのに、やることが姑息すぎ。


小さい男。深瀬くんと大違い。


わたしを捕らえていたこの人に対する恐怖心は、じわじわと呆れと怒りに変わっていく。