これから先のことを考えないように、思考を別の所へ移そうと必死になる。

どうせ良くないことしか、起こらないはずだから。


「…へぇ。写メよりいいじゃん。マジでこの子が深瀬の女?」

「ああ。間違いねぇ」

「ちょっと、かわいそうだからガムテ剥がしてあげなよ」


──え…。


「は?騒がれたらどうすんだよ」

「ここで叫んだって誰も来ないし問題ないでしょ。ま、いーわ。俺がやるよ」


俯いたままでいると、近づいた影から手が伸び、わたしの口を塞ぐガムテープをゆっくりと剥がしていく。


もしかして、この人そこまで悪い人じゃな…


「でもうざいから、騒いだらここにいる全員で輪姦すからね」

「──!!!」


ぜ、前言撤回!!


助けてお巡りさん!!


助けて深瀬くん─!!!


「──!」


唐突に顎を持ち上げられ、顔を上向きにされる。


目に飛び込んできたのは、長めの金髪が一際目につく、いかにもチャラそうな男。


両耳にいくつものピアス、色白の綺麗な肌、日本人離れした整った顔立ち。

青い瞳は自前なのかカラコンなのかわからないくらい、自然にその顔に収まっている。

この小汚い学校には到底似合わない容姿。


だけど妙に威圧感があり、恐怖さえも感じて、わたしはヘビに睨まれたカエルのように逆らうことができない。


有無を言わせないオーラ。この人が北栄のトップ、澤田──。