廃れた校舎。整理整頓の欠片もない校内。至る所に壊れた机や椅子、煙草の吸い殻が散乱。

ビールの空き缶なんて捨てられていたりする。


窓は割られ、壁にはくだらない落書き…。時代錯誤か!いつの時代だよ!

この学校だけ時間が止まっているみたいだな。


放課後だからか、すれ違う生徒は誰もいない。


車内では何もされなかったから一安心したけど、それもすぐさま吹っ飛んだ。

この学校、空気悪すぎ…。


車内でも「深瀬の女の趣味はどうなんだ」的な感じの話を延々とされて空気が悪かったけど、それとは違う空気の悪さ。


まだ夕暮れ前なのに真っ暗に見えるよ。

足の震えが止まらない。


ていうか一応ここ男子校だよね?わたし、いていいのかな?

あ、そういうレベルじゃないって話?


…ダーリン今頃、何してるかな…。


「澤田、連れてきたぞ」


菊池らしき人が、乱暴にドアを開け中に入る。


『会議室』と書かれた教室。ドアが開いた瞬間から、異臭が鼻について気持ち悪い。

煙草の匂いとは別の嗅いだことのない匂いが混ざり、教室中を包んでいる。


「早く入れっつーの」

「っ、」


中へ促され、俯きながら足を進める。


怖くて前を向けない。現実を見るのが怖い。