──なっ、なに?!


急に後ろから口を塞がれた。

大きな男の手。煙草の匂いがやたらときついその手の力はひどく強く、口を塞がれたまま引きずられる。


「──っ!!」


抵抗しようにも叫ぼうにも、どうにもならない。

吐き出したい大声は悲しいほど音にならず、男の手の中で消えていく。


「ちょろくね?こんな女一人、いくらでもヨユーで拉致れるわ」

「深瀬がいるとうぜぇんだよ。今日はいねーみてぇだな。楽勝だ」

「今回はマジで失敗できねーからな。とにかく早く行くぞ」


三人掛かりでわたしをどこかに連れ去ろうとするこいつらは、しつこいにも程がある、北栄高校の制服。


そして、以前にも見たことのある顔が二人。


昨日のアフロとスキンヘッド…。途中で逃げた二人じゃないの。

どうしてこうも諦めが悪いのよ。昨日ダーリンにやられたばっかりじゃないのよ。

不良なら不良らしく、ネチネチしないで堂々としてればいいものを。


「おっ、ちょうどよく来たぜ」


…う、そ。


三人が迷うことなく向かった先に、黒のワンボックスカーが停まった。

スモークがかかったガラス。ミラーやドアノブのメッキが怪しく光る。


リアのドアが中から開き、北栄の制服を着たこれまた怪しげな男が、わたしを見てニヤリと笑う。