「ま、今じゃ母親しかいねぇけどな。母親っつっても、他人と変わんねぇ。顔も見たくねぇ」

「…どうして?」


それ以上はさすがに言えなかった。これが限界だ。

思い出すのも反吐が出る。


「お前んちも狂ってんだろうけど、俺だって同じように狂ってる。おかしいのは、お前だけじゃねぇ」

「…ダーリン…」


環境は違っても、親が悩みの種なのは一緒。

この現状が、普通のわけがねぇ。


「だから、んな顔すんな」


何を血迷ったのか、逢川を励まそうとしている俺。

励ます以前に、その落ち込んだ顔を見るに耐えなかった。


俺を見つめる今にも泣き出しそうな表情。どうしてか俺まで気落ちしそうになる。

馬鹿みたく笑っている顔の方が、誰だっていいに決まってる。


例えお前のその笑顔に、陰があろうとも。


「ありがとう、ダーリン!大好き!」


ぶっ──!!!!!


「は、はあ?!いきなり何言ってやがる!つーか、それマジでやめろ!鳥肌もんだ!」

「ダーリンたら照れちゃって」

「っだー!お前日本語通じねぇのか?!」

「大好き大好きー!」

「やめろアバズレ!」


なななな何言ってやがんだ!!


さっきとテンションも表情も違いすぎだろ!


こっ、こいつはやっぱり厄介だ!!