「うちのお父さん、機嫌いい時はめちゃくちゃいいんだけどね!それを壊されると反動で恐ろしく不機嫌になっちゃうの!」

「おい、お前…」

「元から機嫌が悪い時もあるけどね。壊すのはいつもお母さんで、何年も一緒にいるのにお父さんのことを理解できないお母さんは、気づかずに地雷を踏んでるんだよね~」

「…」

「タイミングが悪いんだろうね。どれだけ殴られても懲りずにまた地雷を踏むの。それでお父さんの機嫌がよくなるまで殴られ続ける。ほんと馬鹿だよね!学習能力ないんだろうね!」

「…」


笑い話かってくらい、逢川は明るくふざけて話す。

それも、わざと俺に何か言う隙を与えないように、早口で。


「いつもはわたしにはあまり手をあげないんだけどね。機嫌を損ねた原因がわたしにもあったせいか、仲裁に入ったら思いっきりやられちゃったよ。中々腫れがひかないんだよね。ダーリン、なんかいい方法知ってる?」

「…」


何も言い返せない。何を言ったらいいか、言葉が出てこない。


「ごめんねー、逢川家のお恥ずかしい家庭の事情なんか聞かせて。ダーリンの親とかけ離れてるでしょ。どこのお父さんもお母さんに手はあげるだろうけど、こんなくだらないことでしないよね。うちの親、人として終わってるよね~」

「んなわけねぇだろ」

「…え?」

「男は女に手をあげるもんじゃねぇ」


やっと思考がまとまってきた。


あの不倫親父、まさかDVまでしてやがったのか。しかもどんだけ強く殴ってんだよ。


女、その上自分の子供相手に本気出してんじゃねぇよ。