「ふ~ん。わたしは立ててない方が好きだな」

「はあ?!」


すっ…─?!


「普通の高校生って感じがして好き。普通にかっこいいよ」

「おっ、お前っ、すっ、好きだなんて、男に簡単に言うもんじゃねぇ!」


ったく、毎度言われる方の身にもなれってんだ!


「好きなものは好きなの!そっちの方がかっこいいもん!」

「馬鹿やろ!もうやめろ!黙れくそ女!」

「きゃっ」

「え…」


女の声に反応し、逢川が目を向ける。

ふと気づくと、周りにいた登校中の生徒達の視線は俺らに集中していた。


何を見てやがる。何か言いたいことでもあんならはっきり言いやがれってんだ。


「わたし先行ってるね!」

「早く行けっつーの!」


イラつきだし俺の眉間にシワが出来たと同時に、逢川は一言残し走り去っていった。


その場に一人になった俺。その瞬間、俺らを見ていた奴らはあからさまに大きく顔を背け歩き出す。


俺はよくわからない感情が渦を巻く胸を、どう落ち着けようか大きなため息をついた。


周りの視線にイラついたのもあるが、きっと赤いであろう俺の顔を他人に見られたことが、何より不快だった。


──逢川め。俺に何をしやがったんだ。