馬鹿なお母さん。

殴られるのをわかっていながら口を出すなんて。


お父さんがお母さんに手をあげるのはいつものこと。

お父さんが上機嫌で、お母さんが倒れていないだけ今日はマシな方だ。


「ありがとう。じゃ、勉強頑張ろうかな」

「無理しないんだよ。帰ってきて毎日勉強することなんてないんだから」

「無理なんてしてないよ。好きでしてるの。お母さんの自慢の娘でいる為にもね」

「…そっか。ご飯できたら呼ぶね。頑張って」

「うん」


お母さんの顔を見ないようにリビングを出て、階段を上り自分の部屋に入る。


ドアを閉めるとここは、わたしだけの小さな空間。

しんと静まり、呼吸する音さえ耳に響きそうだ。


鞄を床に下ろし、勢いよくベッドに座る。

そのまま仰向けに寝そべった。何かが視界に入るのが嫌で、右腕を目の上にのせる。