…もう、本当の限界なんだ。

この人も、俺も。


いや、限界なんてとっくに過ぎていたに違いない。


震えるくらい、更に拳を握りしめる。


「…ならとっとと籍を抜けよ」

「そんな単純にできる話じゃないのよ」

「は?」

「中学は話をつけてあるから卒業できているわ。うちのマンションの部屋をとってあげたからそこから高校に通って。家賃や光熱費は気にしなくていい。高校はあなたが入学できるような学校で、世間体が悪くないところを用意しておいたから」


…どういうことだよ。


「カードをあげるわ。現金もカードからおろして。他の手続きなんかは秘書に頼んでいるから、何かあったら庄司さんに連絡しなさい。常識内で不自由のない生活を保証してあげる。だから最低限高校だけは卒業して」

「…」


なにかの台本をそのまま読んでいるのではないかと思えるほど、淡々とした口調。

一瞬でも、俺に目を向けることはない。


また、無意味に胸が痛くなる。


──高校。そういやもう春休みなんだな。中学の卒業式は終わってんのか。

ろくに通ってもいねぇのになにが卒業だよ。


受験もしてねぇのに入れるってどんだけの学校だよ。金でも積んだのかよ。それかコネだろ。


高校だけは卒業しろってことは、もう犯罪じみたことをするなってことか?それと引き替えに俺は不自由ない生活を保証されるのか。


…つーか。