骨にヒビが入ってんだかなんだか知らねぇが、それからずっと入院、リハビリ。


そして退院する今日この日まで、ここに二人が姿を現すことはなかった。


迎えにも来ねぇつもりなんだろう。


金を出してもらっただけいいと思うしかねぇな。…なんて、俺はこの期に及んで心のどこかで待ってでもいたみてぇだ。


待つだなんて、なんとも恐ろしく滑稽。ここまで迷惑ばっかかけておきながら、愚かすぎる。


二人が俺を本気で心配するなんてことは、なにがあってもねぇっつーのに。


「つーかどうでもいいんだよ。行くわ」

「あっ!ちょっと、待ちなさ…」

「圭悟様」

「──っ、お前…」


ドアが開いていた病室に突如現れた、一人の男。

スーツを無駄すぎるほどキメたこいつは、二人の秘書兼俺の尻拭い係の庄司。


いつもいつも固い表情を崩さねぇ、鉄壁のような男だ。


病室を出ようとしていた俺の足は、こいつのせいで止まる。


「遅くなり、大変申し訳ありませんでした」


固い表情のまま、庄司は深々と頭を下げた。


何してんだよ。別にお前なんか待ってねーし。責める気もねーし。