ガチャッと音を立て、玄関のドアを開け家の中へ入る。


『学校の中の人気者の咲良』はおしまい。

次は『逢川家の中のお利口さんの咲良』に変身。


楽しかった時間は夢のように遠く感じる。


「お、今帰ってきたのか?」

「─あ、お父さんお帰り。帰ってきてたの?」


玄関でお父さんとはち合わせた。


やだ、もう帰ってたのか。今日は早いな。珍しい。


「いや、また出るわ。新しいクラスは慣れたか?」

「もちろん」

「良かったな。お前は何の欠点もない俺の自慢の娘だからな。じゃあな、勉強頑張れよ」

「うん。行ってらっしゃい」


わたしの頭に優しくポンと触れ、お父さんは家を出て行く。


笑顔を残して行く先は、どうせ女の人の所。