「ついに来なくなったか」

「なんで笑ってんだよ。よし、もっかい連絡してみるわ。黙って大人しく待ってろよ」


警察のおっさんが立ち上がり、俺に背を向け電話を掛けだしたのを見届け、俺はするりと交番を後にした。


交番が見えなくなると、走るスピードを緩める。

そのまま歩きながら煙草に火を付け、暗い中に漂う白煙を眺める。


──来ねぇってことは、もう俺のことを見限ったんだろうな。


当たり前だな。思ったよりも遅すぎたくらいだ。


自分からはどうやったって離れられなかった。そんな術なんてわからなかった。いや、できなかった。


二人が俺に愛情がないとわかっていながらも、俺から切ることはできない。ガキの証拠だ。


わざと命を危険にさらそうと、ヤクザにケンカを売ってボコられたり、無免でバイクに乗って事故ったりしても、何度死にそうになっても死ねなかった。


人間てのは、簡単には死ねないらしい。


自ら命を絶てず人任せにしてる分には情けねぇが、いつ死んでもいいとは常に思っている。


──見上げた夜空は、絵の具で塗りたくったような黒さだ。


「ウラァ!!」

「──っ!!!」