頬を伝う涙。


一瞬にして胸がえぐられる。


…何してんだ俺。

俺は、何がしたいんだよ。


こんな顔をさせる為に、今までやってきたのか?


これだけ心配してくれて、俺の為に涙を流してくれて、もう愛情を確認するには充分じゃねぇか。


きっと、この人はずっと俺の親でいてくれる。

見捨てたりなんかしない。そんな馬鹿な人じゃない。八年も一緒にいて、俺は何を疑っていたんだ。


俺らは紛れもなく家族なんだ。


こんな形で愛情を確かめる必要なんて微塵もなかったんだ。


…やめよう。


馬鹿なやり方で愛情を試すのは。


ちゃんと謝ろう。


今まで悪かったと。もうケンカなんかしないと、約束するんだ。


ちゃんと…


「わたしいい加減限界だよ」


…は?


一人、部屋で考え込んでいた俺は、意を決し両親に話そうと二人の部屋に向かった。

ドアノブに手をかけると少しだけ開いていたドアの隙間から、母親の苛立つ声が耳に入った。


その声に、反射的に手が止まる。