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「圭悟が悪くないのはわかってる。でもね、どんな理由があっても、暴力だけはだめだよ」

「だって、すげぇムカつくんだよあいつ」

「それでもだめ。すぐに手をあげるのは、心に余裕がない人がすること。圭悟はそうじゃないよね?」

「でも…!」

「圭悟が怪我したら、わたしだって辛いんだよ。それに体だけじゃなく圭悟の心だって、傷ついたでしょう?」

「…」

「相手を傷つけた分、自分も傷つくんだから。もうケンカなんてしちゃいけませんよ」

「…はい」

「ふ。やっぱり圭悟はお利口さん!さすがお父さんとお母さんの息子!」

「うわっ!やめろよ恥ずかしい!」

「だってお母さん、学校から連絡がきた時すごく驚いたんだよ!圭悟に何かあったんじゃないかって、心配で不安でたまらなかった。心臓に悪すぎ」

「…ごめん、母さん」

「今度やったら承知しないからね~?」

「うん。わかった」



──ほらな。


俺があいつを殴ったって、こうやって優しく受け止めてくれるんだ。

俺の味方でいてくれるんだ。


俺がどんなことをしたって、見捨てたりなんかしない。本物と同じだろ?


もう中学生になるってのに、恥ずかしげもなく抱きしめてくれる。


偽物なんかじゃないだろ。


俺がどんなことをしたって、父さんと母さんは絶対に見捨てたりなんかしないんだ。


どんなことをしたって、絶対に…。