「今日からよろしくね」


そう言って俺の頭を優しく撫でた。


六歳の俺にも、優しく微笑みかけるその女は『綺麗』に見えた。


「今日から『ふかせけいご』だからね」


女の隣で、女と同じ表情をして俺に目線を合わせようと屈む男。


今までに見たことがない、『品の良さ』と『かっこよさ』。


一瞬にして『こんな大人になりたい』と、当時の俺の憧れの人物になった。


「おれ、そんななまえじゃないよ。おれのなまえは…」

「いいのよ、けいごくん」


後ろから安心させるように、俺の肩に手を添える園長。


一番信頼していた存在だからか、園長が微笑みを向ける、二人に対する警戒心は薄れていった。


──でも。


「えんちょうせんせい、おれ…」

「『ふかせけいご』でいいの。わたしはけいごのお母さん、こっちの人はけいごのお父さんになるんだよ」


……意味がわからなかった。