「ごめんねー、逢川家のお恥ずかしい家庭の事情なんか聞かせて。ダーリンの親とかけ離れてるでしょ。どこのお父さんもお母さんに手はあげるだろうけど、こんなくだらないことでしないよね。うちの親、人として終わってるよね~」

「んなわけねぇだろ」

「…え?」


な、なにが?

人として終わってないってフォローでも入れてくれてるの?


「男は女に手をあげるもんじゃねぇ」

「…え?ああ、それはダーリンの場合でしょ?みんな口にしないだけで、普通は男が女に手をあげるのは当たり前…」

「はあ?普通なわけねぇだろ。馬鹿か」


…う、そ。


「何言ってんのダーリン。みんなここまでひどくないから言わないだけで、家の中じゃ」

「ひでぇもなにも、DVは犯罪だろ。つーか男が女殴った時点で警察沙汰になってもおかしくねぇ。お前、マジで言ってんのか?常識知らねぇのか?」


からかう素振りなんて微塵もなく、わたしの目を見据えながら言う深瀬くん。


─と、いうことは…。


「…じゃあ、うちがおかしいの?」


そんなわけない。うちの親だけが異常なんて…。


「マジで言ってんのかよ…。異常も異常だろ。んな日常的にDVがあってお前の母親、サツに何も言わねぇのかよ。家に来たりしたことねぇのか?」


警察?が、家に?どうして?


「…ないよ」