「すげぇ勢いで食ってんな」

「…あ~…。よく、ご存知で」

「殴られたみてぇな腫れ方だな」


箸を持っていた手が止まる。


…ダーリン、もしかして気づいてる?


「…そうなの!ちょっとねー!にしてもさすがだね!ケンカ慣れしてる人は違うね!」

「澤田絡みか?!」

「え?!」


冗談で流そうと軽く言ったのに、思いもよらず真面目な顔をして返された。


深瀬くんの空気に、少したじろいでしまう。

ダーリン、なんでこんな真剣に…。


「ち、違う違う!これは…」


これは、なんて言うつもりなの?

虫歯が嘘だってバレてるダーリンに、どんな嘘を…。


「誰にやられたんだよ!」

「──」


─久しぶりに、止めに入ってお父さんに殴られたこと。


心配してくれた友達に嘘ばかりついたこと。


嘘で塗り固められた自分。


深瀬くんに強く見つめられ、胸の中で張りつめていた何かが、ほんの少し緩いでしまった。