お母さんの登場で、心の温度が一気に冷めた。

するりとバイクから降り、ヘルメットをダーリンに渡す。


「今日はほんとにありがとう!また学校でね!バイバイ深瀬くん!」

「は?!…」


胸の中と反比例するようにやたらとテンションを上げ、造り笑顔で明るく手を振った。

何か言いたげな顔のダーリンを残し、勢い良く振り返り家に向かう。


「咲良?」


深瀬くんを気にかけながらも、わたしに駆け寄るお母さん。


「お母さん、今日のご飯なに?!」

「え?今日はラザニアだけど…」

「やったー!っていうかよくわたしってわかったね!」


ヘルメットしてたのに!


「ヘルメットしてたからちょっとわからなかったけど、鞄と靴で咲良かなって」

「さすがお母さん!」

「ねぇ、今の彼、深瀬くんだっけ?咲良の彼氏?」


お母さんはにこにこしてわたしに訊ねる。

なんでそんな笑ってるの。


お母さんとこういった類の話はしたことがない。元より、あまりしたいものではない。


「彼氏じゃないよ!わたしが好きなだけ!ていうかお母さん何してたの?どこか出掛けてたの?」


玄関のドアを開け、家の中へ入る。

良かった。お父さんはいないみたい。