森野が好きなのは造り物のわたし。『学校の中での逢川咲良』。


本物のわたしを知ったら、森野、どんな顔をする?

本物の醜いわたしを知っても、好きでいてくれる?それでも、笑ってくれる?


あんたは優しいから、はじめは無理してわたしを受け入れてくれても、いつかきっとわたしを持て余す。


優しい森野だって、男だもん。浮気だって当然するでしょう?


慣れたら当たり前のように、わたしに手をあげるでしょう?


そんな森野、見たくないし知りたくもない。やっぱり友達のままがいい。


ずるいわたしは、はっきり断ることさえしなかった。むしろ森野に最後まで告白させなかった。


森野の告白をうやむやにして誤魔化して、森野から逃げた。


なんてひどい女。


素の自分が出てきそうになった。奥深い所に閉じ込めている自分が、森野を余計傷付けそうになった。


だからわたしには逃げるしかなかった。


「……森野。あんたが好きな逢川は幻。本物のわたしは、あんたが想像するより遥かに汚い。深くて暗い場所にいる」



──こんなわたしを丸ごと受け入れてくれる人なんて、現実にはいるわけない。