自由の身になったのに力が入らないわたしは、無意識にその場に座り込んだ。

震えが止まらず涙が溢れる。


男から手を離した金沢くんは、しゃがんでわたしの顔を覗き込んだ。

その表情から、本気で心配してくれているのがわかる。


「金沢く…」

「お前、その顔…」


わたしの顔を見た途端、表情を険しくする金沢くん。


「悠大、おめーどういうつもりだこら」

「咲良、早く逃げろ」

「え…」


逃げろって、わたし一人で?


できるわけないでしょ。元凶のわたしが、金沢くんを残して逃げるなんて…。


「何おもしれぇこと言ってやがる。いい加減にしろよ」

「俺らが澤田の指令で動いてるってわかってるよな?」


近づく三人から庇うように、わたしを背にして立ち上がる金沢くん。


その背中はとても頼もしくて、可愛いなんて思ったことを心底謝りたかった。


まさか、金沢くんが助ける側になってくれるなんて…。