「おはようございます」

「おはよう」


エントランスでエレベーターを待っていると後ろから声を掛けられた。
同じチームで3年後輩の由貴ちゃん。


「葉月さんと同じ電車だったんですね」

「みたいだね」


由貴ちゃんは気づかなかったなぁと呟きながら首を傾げる。
同じ路線のため、電車を降りてから会社まで一緒になることが多い。
まだあたしのことをじっと見ている視線を感じる。


「…それ。メンズですよね」


あたしの着ているケーブルニットを見ながら言った。
ブルゾンの下は、由貴ちゃんの言うとおりメンズのニット。


「彼氏さんのですか」

「…まぁ、そうだね」


ウソをつく必要もないと思ったので、あたしは素直に認めた。


「じゃあ、やっぱり電車いなかったんだ」


自分は正しかったとでも言うように由貴ちゃんは頷く。


そのとおり。
今朝は智樹の部屋から出社していた。
智樹が帰ってきたわけではない。

昨日、智樹の部屋の掃除をしに行った。
天気もよくて。
干した布団が気持ちよくて。
取り込んだブランケットにくるまったら、そのまま眠ってしまい。
起きたら朝になっていた。

自分の部屋に帰る時間は無くて。
でも、服は休日仕様。
智樹のクローゼットを広げて、借りられる服を着て出社することになった。

朝から思わぬ質問攻め。
エレベーターに乗ってからも続く。


「クリスマスの予定も決まってるんですか」

「ううん。仕事でしょ」

「何もしないんですか、二人で」

「しないねぇ」


智樹は年末年始も帰らないと言っていた。
だからあたしに、部屋のカギを預けていったんだ。
掃除しておけという意味を含めて。


「あ。じゃあ、葉月さんもクリスマス会来てください」

「行く行く」


あたしはノリノリで返事をした。


「予定あるんだろうなぁって思ってたから誘わなかったんですけど」

「誘って。断らないから」

「彼氏さん、ほっといていいんですか」

「だってこっちのほうが楽しそう」


ってゆうか、基本的に飲み会誘われたら断らない。
まぁ、先約があったら別だけど。
由貴ちゃんは飲み会の日程をおしえてくれた。
プレゼントの準備が必須だとそえて。