とある夏の下旬。私は、何も変わらない毎日を送っていた。どこにでもいるよう  な2年生の高校女子。すっかり高校生活にも慣れ、友達もたくさん出来た。私    の名前は、綾瀬有紗(あやせ ありさ)。部活は、水泳部。特に成績もないが、  部員からは結構親しまれている。
「行ってきまーす!」
 いつものように、元気に家を出ていく。
「有紗ちゃん、おはようー。」「おはよーう」
 玄関先には、友達である坂本 瑠花(るか)と清水 愛彩(あや)が待っていてく  れた。
「2人とも、おはようー!いやー、結構、暑いねー!」
 そんな話をしながら学校へ向かうのが有紗の日常だった。瑠花と愛彩は、同じ水泳  部員で同じクラス。
 3人とも、彼氏はいないが………好きな人はそれぞれいる。只今、恋にまっしぐらの  ところだ。
「ねぇねぇ!有紗ちゃんは、今どうなの?!」
「何が?」
「一稀(いつき)君のこと♡」
「ぅえ?!なんともないよ!?普通に話して…普通に部活して……いつも通り!」
  成田 一稀とは、有紗が好きな人だ。部活も水泳部で、この学校の水泳部は男女  一組のチームを作って活動するのだが1年生の頃からのパートナーだった。対す   る瑠花と愛彩の好きな人も同じ水泳部のパートナーだった。2人は後程出てくる   だろう。
「そそそそういう瑠花は、どうなの!?」
「ええ?!私は……ふふっ♡…内緒!」
「えーーーーーーー!?絶対、何かあったでしょ!」
 そんな中、愛彩が
「みんな、恋に夢中だねーー♡」
「そういう愛彩だって、恋してるくせにー!!」
「もー、有紗ちゃんったらー」
 そんな話をしていると、あっという間に学校に着いてしまった。教室に入ると3人  の男子の内の1人が
「おう、有紗おはよう」
 話しかけてきたのは、一稀だった。有紗は、思わず息をのんだ。
「(ちょ!?いきなり話しかけてくるとか、久しぶりなんですけどー?!)」
「おおお、おはよう…」
「どうした?すげー動揺してるけど(笑)」
「ばっばか!動揺なんか…してないし…」
 有紗は、心の中で
「(好きだから……なんて言えないし……)」
そんなことを思いながら、他の2人を見ると好きな人が相手なのに平然と話してる。
 瑠花のパートナーは、天神 春(あまみ はる)。女子っぽい名前だが、れっきと  した男子だしかも超かっこいい。
  瑠花は、完全に恋に落ちてしまった。顔は平然としているが、心の中は爆発しそ   うなくらい緊張しているだろう。
 愛彩のパートナーは、氷雨 蒼生(ひさめ あおい)。こちらも、女子っぽいが男  子だ。蒼生は水泳部の中でも人気が高い。その理由としては、性格の良さや後輩  への優しさといったところだろう。
「そーだ瑠花、今日いっしょに練習していかない?」
 春が言うと、瑠花は
「うん!もちろん!」
 と嬉しそうに言った。それもそのはず、春から練習しようなんて言うことは滅多に  ないからだ。いつもは瑠花がさそっている。こればかりは、春が好きな瑠花に   とってうれしいことだった。
「愛彩も、練習したほうがいいんじゃない?この前の大会から記録落ち始めてるど…」
 蒼生は心配そうに言ってきた。
「そーだよねーー、ちょっと最近食べ過ぎて体重増えたのかなー」
 愛彩はかなり天然だ。話すときも、語尾を延ばすことが多い。
「そんなことないよ。愛彩は、いつも通り可愛いよ。」
 その瞬間、愛彩の心がドキッと跳ねた。幸い、他の4人は話していて聞こえてな   かったようだが‥…
「(え?!聞き間違いじゃないよね?!今……かわいいって……やばっ!!顔、赤くなっ  てないかな?!)」
 愛彩は、誰が見てもわかるくらい動揺していた。それでも…
「ありがとう!!」
 笑顔で蒼生に返すと
「どういたしまして」
 と笑顔で返してくれた。
「(いつか、蒼生君と付き合えたらなー……なんて♡)」
 そんな夢を想像する愛彩であった。
 一方、有紗はというと
「(いいなー2人とも。好きな人とあんなに楽しそうに話してて……。私なんて、一稀 と話すが精一杯なのに……」
「……ん、…おん、………しおん!」
「え?!な、なに?」
「なにって、ボーとし過ぎ。何考えてたの?」
「何にも……(一稀のこと考えたなんて、言えるわけないない!)」
「ふーん……」
 と、一稀が意外なことを言ってきた。
「もしかして、俺のこと考えてた?」
「なっ!?な、な、なんで!!??そんなわけないじゃん!てか、なんで?!」
「だって、ずっと俺のこと見てたから…」
「な?!」
 そう、有紗は無意識に一稀のことを見てしまっていた。それは、好きな人がいると  意識してしまうことと同じことだった。この女子3人、完全に恋に落ちてしまって  いる。その後、いつものように1日を過ごし
  春と瑠花の練習も終わり、6人でいっしょに帰ることになった。その道中で、女子  3人は楽しみにとってお くのがもったいないくらいのイベントがあることに気が  付く。