「葵、あんたが無茶して奉納試合を披露したのはお見通しさ。あんたは視察行脚でも喧しく言わなきゃ無茶をするだろ」

「叔母上には適いませんね。OKと言うまで引かないのでしょう?」

「解っているじゃないか」

諦めて溜め息混じりに「宜しくお願いします」と言うと、叔母上は「いつから出掛けるんだい」と訊ねた。

「明朝には出立したいと思うております」

「葵、お前が願い出ると思って、何時でも旅立てるよう、手はずは済んでおる」

「ありがとうございます」

父上に申し上げると、叔母上は「ずいぶん急だね。葵、凛音には話してあるのかい?」と訊いてきた。

「凛音には昨晩、父上に願い出る旨話してございます」

「ったく、早く知らせておやりよ。凛音だって若い娘なんだ。男子のあんたと違って色々準備があるんだから」