騎士控え室の隣、騎士長室の扉を叩いた。

中から父上の声がした。

「失礼いたします」と、扉を開け中に入る。

「体は良いのか」

父上はこちらが声を掛ける前に問われた。

「はい、特に違和感はありませぬ」

「そうか、無理は禁物だ。慎重にな」

「はい……王陛下、お願いがあって参りました」

許しがもらえるか否かを考え、緊張気味に切り出す。

「自分の身体ながら今1つ、健康に自信がもてませぬ。朔に宿った龍神の力を持て余しております。昨晩白龍からはこの身の陰陽の気が乱れていると告げられ……」

父上は俺の顔をまじまじ見つめ、深く頷いておられる。

「湯治に行きとうございます。祖国視察を行いながら、王族の身分を隠し、民の声を直に聞いて回りたいと思うております」

父上は「よし」と力強く手を打たれた。