「──其方が辛い時は余が笑顔で側におる」

急いで付け加えた。

無理に笑おうとする凛音に「寒くはないか」と肩にガウンを掛ける。

何も掛ける言葉が思いつかない不甲斐なさ、自分の器の小ささが虚しかった。

うとうとするたび目を擦り、起きていようとする健気さが愛おしかった。

灯りの消えた部屋を月明かりが照らし、凛音の姿が浮かび上がっている。

龍神の言葉とハーン殿の言葉が頭を離れず、目が冴え眠れずにいると寝息が聞こえた。

凛音が眠気に負けて、布団の上から俺の足に手を起き突っ伏していた。

顔を覗き込み、無邪気だなと思う。

何処からきたのか、何故幼い凛音が1人で彷徨っていたのか、素性の知れない者とは思えなかった。

時折見せる愁いを帯びた瞳が何を思っているのかと、気になっているが、知られたくない過去もあるだろうと敢えて聞いたことはない。