王子の剣術指南役紅蓮殿は容赦なく王子に長刀で応戦する。

「王子、脇が甘い。隙だらけですよ」

しなやかに動く王子の様子には昨日までの頼りない姿は、どこにもない。

自力で立ち上がることさえできなかったことが嘘のようだ。

それほど強い「薬」を使ったんだという実感で背筋が凍った。

闘神祭の奉納試合で、相手の強さも知らされずに戦う不安はどれほどのものかと思う。

昨日まで動かなかった身体で戦うことは、恐ろしくないのかと思う。

不安や恐れを懸命に押し殺し、三節棍を振るう王子の真剣な眼差しに胸が締めつけられた。

「手加減は無用だ」

紅蓮殿は何も言わない。

力の差は明らかだ。

紅蓮殿は一定の距離を保ち、それ以上は踏み込まないが、王子の三節棍は悉く紅蓮殿に交わされた。

「凛音ちゃん、大丈夫かしら王子。もう2時間近く紅蓮殿と対戦しているのよ」