肩に王子の上着が掛けられていた。

慌てて部屋を見回すと、ハーン殿も紅蓮殿も部屋には居らず、王子のベッドももぬけの殻だった。

「王子!?」

ベッドの上には丁寧に畳んだパジャマが置かれ、その上に王子の直筆で、メモが添えられていた。

──凛音、心配かけてすまぬ。目覚めたら鍛錬の手合わせをせよ

王子らしいメモに思わず口元が緩んでしまう。

急いで身なりを整え鍛錬に向かった。

王子の元気な姿を見るなり、嬉しさがこみ上げ「王子!」と叫んだ。

三節棍を華麗な捌きで操り、紅蓮殿を相手に立ち回る姿に惚れ惚れと見とれた。

王子は銀髪をなびかせ真剣に紅蓮殿に立ち向かっていく。

長刀を巧みに操る紅蓮殿相手に、三節棍で果敢に攻めと防御を繰り返す。

凛々しい戦闘姿はいつも通りの王子だった。