「ヤバくねえの? 体力消耗とか、身代わりに自分がとか」

「さあね~」

叔母上と祥のツッコミはあっても落ちの見えない会話が続く。

だが、祥の問いかけみたいな自己を犠牲にしたヒーリングではないことは、確かだと思う。

「どうなんだ?」

祥が俺を振り返り、俺の体を上から下まで舐めるように目を動かした。

「人に分け与える体力なんかあるわけがなかろう」

松葉杖をついて歩くだけでも、今の俺には重労働だと、付け加えたかった。

歩き始めて1時間は過ぎている。

平らだった道はなだらかな坂道になり、所々で蛇行しながら少しずつ細くなった。

立ち止まり汗ばんで滑る手を拭き、松葉杖を握り直した。

「葵くん、足が痛みますか」

凛音が腰を屈めて、俺の足を撫でる。

「何だか熱っぽい」

凛音のひんやりした手が気持ち良かった。