(どうしよう)優子は困惑した顔で信二の顔を見た。
「あの・・俺、経済学部3年の坂口信二って言います。あの・・すみませんでした!」
「えっ・・」優子は目を見開いた。
「いつも昼休みに裏庭通ってましたよね。3日前も。髪、俺の落とした煙草のせいですよね。」信二が申し訳なさそうに言った。
「あっ・・」優子はその後の言葉がでなかった。気になっていた彼が目の前にいて優子が通っていたのを知っている。彼からは、もう甘い煙草の香りがしなかった。
「チョコレート・・」優子はうつ向き小声で言った。「えっ?」
「煙草辞めたんですか?」「あの日から吸えなくて。」信二は申し訳なさそうに言い、「本当にすみませんでした。」と深くお辞儀をした。
気がつくと、優子の目は涙でいっぱいになった。ポロポロ落ちる涙。
(やっぱり好きなんだ)優子は自覚した。「あの・・いつか煙草を見れる勇気がでたら、あの煙草吸ってください!好きなんです。・なたが・・あのチョコレートの香りが」
「・・・はい」信二がゆっくり笑顔で言った。
優子の気持ちが少しだけ軽くなり笑顔になった。