観覧車に乗り始めて数分経つと段々街が一望できるところまで上がってきた。




「わぁ!すごい!あたしとテツの家も見えるかな!?」


「あ?んなの見えるわけねーだろ。
……あ、あれ澪ん家じゃね?」


「え、どこどこ!?」


「…うっそー」


「はぁ!?ほんと信じらんないんだけど!」




風のせいか観覧車が少し揺れた。
近くにあった手すりに掴まりながら、向かいにいるテツを睨んだ。




でもそこにいるはずの人はいなかった。




「あれ、テ……」


「…澪」


「…っ!」




すぐ耳元であたしの名前を呼ぶテツの声が聞こえた。




隣を見なくてもテツがあたしの隣に座っていることがすぐに分かった。




水族館では二人でいても、二人っきりになることがなかった。




そして今は観覧車の中で二人っきり。




なんだかいきなり緊張してきた。




「い、いきなり隣に来てど、どうしたの……!?」


「…んー、今日は手しか澪を感じなかったから」




全身で澪を感じたくて。




テツのいる反対側を向くとお腹に回ってきたテツの長い腕。




背中にテツを感じるだけで鼓動が一気に速くなる。