あっちで小橋君が真面目に勧誘してるのに、何やってんだこの人は。
「ま、新入生じゃなくても大歓迎だからさ!
今ちょうどマネ募集してたし!
テツー!お前の嫁ゲットしたぞ!」
「ちょっ…!なり、先輩…!」
怒りで危うく成宮と呼び捨てにして叫びそうになったけどそこをなんとか堪える。
成宮先輩がテツを呼ぶと、長身のため他の生徒より頭何個分か飛び出てる巨人がこっちを振り返った。
ばっちりとテツと目が合い、憎たらしい笑顔でこっちにやってくる。
「でかした、成宮。
澪ちゃん原高バレー部へようこそ」
「やらないから!強制的に入れようとすんな!」
「えー、まぁ固いこと言わずにさ。
今から10分以内に入部すれば、この飴ちゃんがもらえます」
何、テレビショッピングみたいなこと言ってんの!
というか特典ヘボ過ぎでしょ!飴玉一個って。
しかも飴玉の袋クシャクシャだし。
その飴玉絶対ポケットに入れておいたらそのまま忘れて、今なんとなくポケット探ったら出てきたってパターンの飴玉でしょ!
つっこみたいことがありすぎて、逆に声が出てこない。
とりあえず出てきたため息をつくと、高価そうなローファーの靴音と「あの…」という控えめな声が聞こえてきた。