「もし、別れなかったら?」

「どーした。今日はぐいぐいくるな」


高城くんは少し困ったように笑いながら言った。
ごまかそうとしていることが感じられて、あたしはそうさせないように抵抗する。


「後々のこと考えたら面倒だからとか、そういうんじゃなくて。高城くんの気持ちをおしえてほしいの」

「浪岡…」


もう目の前に駅が見えている。
いつの間にか向かい合って立ち止まっていた。
後から来る人はチラッとこちらを見て通りすぎていく。


「まっすぐ言ったらまっすぐ答えて」


視線を一度足元に落とした。
それから、一気に息を吸って視線を上げた。
高城くんもまっすぐにあたしのことを見ている。


「あたしは高城くんのこと好き」


一瞬、すべてが静かになったような。
音がなくなったような、そんな気がした。
あたしはさらに言葉を続ける。


「明日、有休だし。どんな結果でも大丈夫だから。それに退職申請もしてきたし…」

「え。プロジェクトどうすんだよ」

「そんなの、代わりはいるし」


って、話がそれる。
そうじゃなくて…と言おうとしたら高城くんが「違った」と呟いた。