桜も綺麗に散ってしまい。カレンダーは5月に入っていた。



世間一般ではゴールデンウィークで大盛り上がりに違いない。どこ行く?何する状態だ。だけどーーーー休みだと言うのに高級マンションの優の部屋にはあたし一人しか居ない。





4月の終わり頃に差し掛かるとあれだけ毎日のように遊びに来ていた隼人くんも双子もパタリと来なくなった。



詳しい話は何一つ聞いていないけど、たぶんあっちの事情が忙しいんだと思う。あっちの事情とは敵対している高校同士の争い事とか。たぶんそういう事だ。



優は毎日一応顔は合わせるけど朝いつも通り学校に行ってからの帰りはだんだんと遅くなっていった。




理由はあたしからは聞かない。きっと教えてくれる時期がくれば教えてくれると思う。そう思いたい。ただ気になる事は気になるわけで、ここ最近あたしはずっとそわそわそわそわ。



ゴールデンウィークなんて言えば普通の高校生は遊ぶ事で頭がいっぱいなはずだろうに、色々と大変だ。そんな時、ポケットに入れていた携帯が震えた。まただ…、何となく内容は分かっていながらもゆっくりと引きずり出してみれば。




新着メールが一件、優からだ。


内容はいたってシンプル、そして最近のメール内容はほぼこれ。【今日も遅くなりそうやから先寝ててね】シンプルすぎるメールの中身に視線を止めたまま【了解】その文字だけを送り返した。




優は帰りが遅くなる時は毎回こんなメールをくれる。意外とマメな男だ。



返信メールを終えてバルコニーの外へと顔を向ければ頭上には暗雲がもくもくと漂っていた。そう言えば今日の降水確率は高かったかもしれない、雨降るんだったかな、忘れちゃった。



「優、傘持って行ったのかなあ」



玄関から出て行った時は手ぶらだったような気もするけど、大丈夫だろうか。



遅いときは本当に遅く帰ってくる。日付が変わる時もあればそれなりの時間で帰ってくる時もあって。だけどいつも変わらないことは必ずあたしに【ただいま】と言ってくれること。