凄いな自分。記憶がなくても色々としっかりできてるじゃないか。だけど…そこでしっかり自分の部屋に入っていったのなら何故ここに。
「じゃあ何で翼の部屋にあたしが居るのさ!まさかあたしの部屋から拉致ってここに連れて来たんじゃなかろうな!あんた拉致得意だし…」
「ばかか!誰がてめえなんか好んで拉致るかよ!お前が夜中トイレだかに起きて部屋間違って入ってきたんだバカ女」
怪しい。じとーっと疑いの眼差しで見つめていると翼の表情がだんだん怒りの顔に変化していく。
あ…この顔はやばい雰囲気だ。そう悟った時には既に遅かったらしく。
「うわっ」
ぐいっと寝そべっていた翼に腕を引かれて気づけば再びベッドのシーツにしっかりと背中がくっついていた。見上げれば頭上には翼が。これはおししし…押し倒されている体勢ではなかろうか。
「お前朝から俺を怒らせてえのか」
「嘘です嘘です!!ごめんなさいっ!!」
ギロリと頭上から睨みつけてくる翼に慌てて謝罪しまくる。そそ、そんなお高い場所から見下ろさないでくださいお願いします恐ろしいです翼さん。
両手を合わせてヒイヒイと悲鳴を上げながらも謝り続けると数秒後――――「はあー」長い嘆息が落ちてきた。
真上から見下ろしていた翼があたしの上から退いて、ゴロリと横に寝そべった事に目を見開く。何故横になる。
「まだ4時だからな…もうちょい寝かせろ。昼になる前に起こせよバカ女。別にお前襲う気なんてさらさらねえから」
それはあたしにここにいろと言う意味――――なのだろうか?
まあそれよりもだ…。