「んじゃー行きますか。」


「そうやな」


「え?どこ行くの?」


「いいから愛愛はついてきて」


「え?ええっ、ちょちょ、ちょっと待ってくれ!あたし部外者だから!」


「今更何言ってんだてめえ。突っ走ってきたくせに」


「誰のせいだと思ってんだ!」



いったいどこに向かうつもりなのか、先頭をゆっくりと歩き出した優に続き空が、隼人くんがとその背中を追っていく。




不安になってその場に立ち尽くすあたしの腕をぐいっと翼が掴み、引き寄せた。



あまりにも強引で乱暴な力に止めていた足が前によろよろと進みだす。



屋上の扉をくぐり、再び元来た階段を今度は下って行く。その間、誰も何の言葉も発しなかった。だけど何だか皆楽しげだった。



校舎の窓からグラウンドが見える。広いグラウンドの端には散りかけている桜の木が見えた。ピンク色の桜の木の下には真っ青なブルーシート。




「あ、あれはいったい」


「愛理ちゃんの歓迎会」



最後の一段をぴょんっと飛び降りた優が頭上を仰ぎ見て笑う。カーディガンのポケットに両手を突っ込み、笑った優は悪戯っ子のようだった。



「か、かか歓迎会?」


「そうよー。お姉さんの事、他の奴らにも紹介しておかねえといけねえだろ?」




そうなの?そういうものなの!?



2年、と書かれた靴箱に当たり前のように向っていく空が、口に咥えていた煙草にジッポの火を着ける。紫煙が舞って、目に染みた。