「してねーよ。大体、誰のために呼んでやったと思ってんだ。お前がこいつに会いてえとか駄々こねるから俺が気を利かせて呼んでやったんだろ。俺は会いたくねえのによ」
「え、隼人くんあたしに会いたかったの?」
「え…えーっと…、だって愛愛今日何してっかなあって思ってさ」
自分の話を出されるとは思っていなかったのか、隼人くんは少しだけ気恥ずかしそうに片手を後頭部へと当てた。ちょんまげにした前髪が頭上で照れ隠しをするように揺れる。
何て可愛らしいんだ。あたし、隼人くんからの呼び出しだったらルンルン気分でやってきたのに!
「じゃあそのお姉さんを呼び出すためにどういう手を使ったんだよ?お兄ちゃんに教えて教えてー。絶対面白いから教えてー」
「仕方ねえなあーお兄様にだけ特別に見せてやろう」
空が翼の肩を抱く。寄り添うようにしながらも翼のスマホの画面へと視線を落とした。二人の後ろからこっそりと優が画面を覗き込む、ちょっと待てお前ら。
「待て待て待て待て!!」
慌てて翼のスマホに手を伸ばす。けれど遅かったらしく、空は「ほおー」思案するように細い指先を顎へとかけた。
数秒悩み。
「残念Aカップもねえな」
「黙ってくれ」
何て事を言うんだ!女の敵だ!
空は可哀想に可哀想にと言いながらも笑っていた。さげずむような笑顔を浮かべてあたしを見下ろしていた。
と、その時。
「あ、てめえ優!何すんだ!」
ヒョイと後ろから翼のスマホを優が奪い取った。非難めいた声を出した翼が体事、優へと振り返る。
優は困ったような表情をしながらも「ほんまに…」と空いている片手を一度だけ額に押し付け。
「お前…アホやろ。」
翼の足を軽く一度蹴り飛ばした。さほど痛そうには見えなかったけど、翼は「いって!!」と大袈裟に声を上げて飛び退いた。