これは由々しき事態だなと考えながらも優が使って良いと言ってくれた部屋へと足を運んだ。



今の所あたしの寝室みたいになっているその部屋はタンスとベッドがひっそりと置かれている。タンスの中には空が選んでくれた服が何枚か収納されている。



そう言えば、あたしが来た時からこの部屋にはベッドもタンスも置いてあったけど元々は誰か一緒にすんで居たりしたんだろうか。他の部屋は双子や隼人くんが時々泊まりに来た時に使っているみたいだけど。



ふむ、と顎に手をかけて考えながらも頭の片隅には冷蔵庫の中身は何が残っていたかな、なんて考えていたり。冷蔵庫の中身なんて考えて、完全にこれは主婦じゃないか!と、その時だった。



ブーブーブーと微かなバイブ音。



顔を上げるとベッドの上に置いていたスマホが震えていた。メールにしては少し長い。まだ震えるそれは止まらない。もしかしたら優が何か忘れ物でもしたのかもしれないぞ。



慌てて持ち上げて画面に視線を落とすと翼様の文字。


あいつ…いったいいつの間に登録したんだ。



切ってやろうとも思ったけど、それはそれで面倒そうだと思い、渋々指先を画面に落とした。



「何の用でございましょうか」


『出るまで10秒もかかってんじゃねえか!おっせえわ!さっさろ出ろよ。誰からの電話だと思ってんだ。』


「何て我が儘なんだ!大体この翼様って何さ」


『あー、お前が風呂入ってる時にわざわざ入れてやったんだから感謝しろ。俺の連絡先なんてなかなか聞けねえんだぞ。超レアなんだからな』


「よし、すぐ削除しておこう」


『削除したらどうなるか分かってんだろうな!』




キーンと翼の怒鳴り声で耳が悲鳴を上げた。



驚いて一度耳から素早くスマホを離したけど、まだ翼の怒鳴り声は続いてる。「俺の連絡先入れさせてもらったからね」くらいにしておけばいいのに。全くもう。



あたしは一度離したスマホを翼の声のトーンが落ちるのを見計らってからまた戻した。