手の平サイズの石ころとは言え、振りかぶって投げつければ無傷では済まないだろう。



現に後頭部にそれを当てられた男は勢い良くあたしの丁度真後ろで音をたてて地面へとすっ転んでいて。




「よっしゃ!俺すげぇなオイ!今のやばくねぇか?プロ野球からスカウトきちまうんじゃね?」


「んなわけねえだろ、つうかこねえよまず。それよりもこいつ死んでねぇだろうな」



石を投げつけて直撃した事に喜ぶ金髪男、しかも何やら意味不明な事を言っている。



嬉々とした様子のまま気絶した男の元までやってくると「やべえ、強く投げすぎたか」反省した態度は微塵も見せず笑ってる。



それを横目に呆れたように嘆息したもう一人の男はツンツンと転がった男を指でつつき銀色の髪を邪魔そうに後ろへと撫で付けた。



明るすぎる二人の髪色があたしの近くに来た事により露になった。



眩しい金色と銀色の髪をジー、直視したままあたしは何が何やら分からず動けない。な、なんだこいつら。



あたしの目の前で今起こった出来事はあまりにも唐突で、あまりにも一瞬で理解できない。



まさか、殺人事件!?そ、そうなのか!?それは大変だ!やばい警察に連絡しなくちゃ!!!そんな事ってあるの?いきなり起きたりするの?慌てふためきながら携帯をポケットから引きずりだした、と。



「てめぇ誰だ?」



慌てて1と数字が書かれた部分に指先を押し付けたあたしに金髪男がゆっくりと視線を上げて問いかけた。端正な顔立ちだがギロリ、こちらを鋭く睨みあげた事でその顔立ちも半減する。



あ 死んだ、あたし死んだよ。絶対殺される。



まだ何もやりたい事見つけてないのに かっこつけるんじゃなかった。やりたい事がなくても専門学校に行ってまた新しい友達を増やせばよかった。それか就職して少しでもお金貯めておけばよかったな。