『そっちいったぞ』


『うっせ、分かってるっつの!!っつうか兄貴もしっかり走れよ!なんっだそのダラダラな走り方は!やる気あんのかよ!』


『いやーだってねえー俺こういうの実際苦手じゃーん?』



闇夜の静けさを突如切り裂くような慌ただしい足音と鋭い声、背後から響いたそれにあたしは驚き勢い良く後ろを振り返った。



な、なんだ!?何事だ!



振り返った先からは街灯に照らされ、こっちに向かって走ってくる人影が三つ。前方の影を後ろの影二つが追いかけるような形でこちらへと迫って来ていた。



な、なにっ!?こんな夜中にいったい何事。



まさか楽しい楽しい鬼ごっこ!?いや、そんな可愛いものではなさそうだ。




だんだんとこちらに近づいてくると顔も少しずつだがハッキリと見えてきた。前を走る1人の男は顔が真っ青で血相変えて後ろの二人から逃げるように悲鳴をあげて走ってる。



後ろを追う二人のうち一人は何を考えているのか分からない表情だがもう一人は鬼のような形相だ。



「てめぇ待てっつってんだろ!!」



鬼のような形相で前方の男を追いかけて居た男が怒鳴り散らしながらも素早く一瞬しゃがみこみ何かをグっと手の中へと包み込み体勢を上げる。



包み込んだ何かがいったい何なのか、そう思い目を凝らした瞬間には野球ピッチャー顔負けな素晴らしいフォームでおもいっきりそれを前方の男へと投げつけたのだ。



ーーードカッ!!



物凄い音が闇夜の中鳴り響いた。コロリあたしの丁度足元まで転がってきたソレは石ころであたしまで顔が青ざめる。