ふー、息を吐いてついつい高ぶりそうになった感情を一旦落ち着かせる。こんな事で声を荒げるのはらしくねえ。落ち着け。



「じゃあ聞くが、何のためにあの女を置いておこうだなんて思ったんだ?」


「なんでやろな。なんか…帰したくなかってん」


「ぶっ」



これには耐え切れなかったのか翼が丁度口につけていたお茶を吹き出した。おいおいきたねえな。



それを見て優も眉間にシワを寄せてる。



帰したくなかったねー。優は女には全然興味なかったはずなんだけどなー。そう女にはもう興味を持たないようにしようとしてたはずなのになあ。



「分かってんのか?優に女が居るなんて噂がたったら…」



口を挟んだのは翼だった。口元を拭いながらも驚愕の表情で問いかける。過去の傷がじくじくと疼く。せっかく塞がった傷が抉られ開かれる思いだ。



「その時は真っ先にあの女が狙われちゃうと思うけどね」



だって女は扱いやすい。叩けば泣くし、殴ればすぐに口を割るだろう。卑怯な生き物。



優…大事な者は少ない方がいいんじゃねえのか?抱えきれねえほどあったら自分が潰れるだけだ。救えなくなるだけだ。抱えられる程度に抑えておけよ。自分が傷つくのはもう嫌だろうが。