「く、来るなよ!!」


「ひっ!ごめんなさいっ」


「……、」


「……マッハで居なくなったからついついあたしも必死になって追いかけてしまいました。そんなに化物みたいに見えた?」



髪を振り乱す恐ろしい化物でも見たような反応だったからそれはそれで女としては傷つくのだが。深手を負ったぜ。



くっ、心臓を片手で鷲掴むあたしに男の子はおずおずと一度閉じた口を開いた。



「……俺、女苦手なんだ…」



また後ろに下がりすぎて玄関にガツンと頭をぶつけてる。



そんなにぶつけて頭は凹まないんだろうかと心配になるんですけど。



でもそんなふざけた思考も目の前の男の子と目が合った時には吹っ飛んでいた。



あたしよりやや大きめの身長。目がくりっくりだ。大きくて羨ましいくらいに。赤茶色の前髪を上にちょんっと結んでいて、制服の着方もハッキリ言ったらだらしない。威嚇するように視線だけは鋭いのに、その子はあたしを見て震えていた。



きっと翼達が言っていたのはこの事なんだと思う。あたしが来たら嫌がるって…ああ、そうかあ。そうなんだ。



「…あ、」



あたしはその子を呼び止めようと伸ばしていた手をゆっくりと引っ込めた。