「それで杏ちゃんを追って裏道に入ったら5人の男が杏ちゃんに襲い掛かってて。でも……」



そこまで言ってあの男が頭にうかんだ。ゾッとするような笑みをうかべてあの場をすごく楽しんでいたあの男。



「…1人だけ壁に寄りかかって何もしないでただすっごく嫌な笑顔浮かべてる男がいてね…黒髪に黒縁の眼鏡をかけてる奴だった。そいつが一番印象に残ってる。」


「黒髪?」


「そいつあたしに北原の誰かの彼女なのか?って聞いてきた。たぶんあたしが誰かの彼女って言えばあたしも標的にされてたと思う。だから……」


「彼女か?なんてわざわざ聞いたってことは やっぱ今度は女に狙い定めたのか…」




あたしが言いかけていた言葉を代弁した空にあたしも大きく頭を振る。



だと思う、きっと。




だってあいつらからすれば女は扱い易い生き物だとでも思っているんだろう。使い道がある、簡単に捕まえられる、そんな風に思っているような態度だった。



「あいつ……何か嫌な感じがする。」


「分からんけど、そいつが東のリーダーかもしれんな」


「かもねえ、回りくどいやり方するじゃねえか」


「そこまで分かれば話は早いだろうが。黒髪の奴なんてそんなに居るわけじゃねえ、探せばすぐ見つかるだろ」



翼が携帯を取り出し、すぐさま仲間に連絡を入れようと片耳へと押し付ける。あたしは慌ててその携帯へと手を伸ばし下ろさせた。何だかそれは違うような気がする。どうして?と言われると言葉に困るけど。



「あれだけ東原の人達と喧嘩になったのに上の人がずっと分からなかったでしょ?なのにそんなに簡単な話なのかな。今まで出て来なかったのに呆気なくのこのこと出てくる?」


「どういう意味だよ」


「黒髪なんて不良高校行ってんのに逆に目立つじゃん。自分が上に立ってる奴だって隠してたのにそんなに目立つ格好いつまでもしてないんじゃない?」


「ならなんで今日は黒髪に眼鏡なんて優等生ぶった格好してたんだよ」



翼は訳が分からないと頭を抱えて唸りだした。