それぞれが椅子へと着きカレーを食べる。隼人くんが杏ちゃんを時折チラリ、見るたびにあたしはドキドキして仕方が無かった。




何か危ない発言をされたらどうしようかと、けれどそんな不安を打ち消すようにして優が口火を切った。



「今回の事、2人にもう少し詳しく教えてほしいんやけど」




それぞれが一旦カレーを食べていた手を止める。一瞬の間を開けた所で、空と翼と隼人くんはまた止めた手を動かした。あたしと杏ちゃんとトシと優の手だけが未だにピタリと止まったまま。



「トシの彼女さんにはキツイ話しかもしれん。でも出来るとこまででええねん。話し聞かせてくれん?」



その言葉に杏ちゃんが頭をゆっくり縦に振る。思い出したのか少しだけ顔色が悪いように見えた。



「言える所まででいいからな」



空が横からそっと助け舟を出す。さすが、こういう時は本当に頼りになる兄貴だ。



「あたしはトシと離れた後に知らない6人組に囲まれて。裏道に引きずり込まれたんです…」


「うん、それで?」


「5人の人があたしに襲いかかってきて…そこで愛理さんが来てくれたんです。その後は愛理さんが助けてくれたので……」




杏ちゃんはそこまで話すと 不安げな表情で優の事を見ている。



「ありがとな。辛かったやろ 怖い思いさしてごめんな」



優のその言葉を聞くと堪えていたのか杏ちゃんはポロポロと涙を流し始めた。トシが慌てて杏ちゃんを横からぎゅうっと抱きしめている。



あたしも抱きしめてあげたかった。勢いよく立ち上がり「杏ちゃん!」駆け寄ろうとしたあたしの足をテーブルの下から誰かが蹴り飛ばす。



「いっ、」


「お前の話がまだ終わってねえだろうが。座れ。つうかてめえは邪魔だろ」


「ひどいなもう!」



翼が頬杖を付きながら早く話せとまた顎を使ってくる。大体邪魔って何だそれ、いや待て、本当だ。



トシと杏ちゃんがひっしと抱き合うそこにあたしが加わる事を想像したら邪魔でしかなかった。