立ち止まっていた優達が後方に流れる。
あたし達が発進した事で、それぞれ目的地を目指すようにしてバイクに跨ったのが肩ごしに見える。
立ち尽くしていたトシと杏ちゃんに空が何かを語りかけたのだけは見えたけど、そこからバイクが角を曲がったためその後の事は分からなかった。
優の家の近くまで、そう言っていた翼は途中、何故だかコンビニの前でバイクを停めると。
「待ってろ」
その一言だけを置いて、コンビニの中に走って行ってしまう。もしや煙草か何かだろうか。あなた未成年でしょうが。
数分後、すぐに戻ってきた翼の片手には当たり前にコンビニ袋。
「何買ってきたのさ」
まさか煙草じゃないでしょうね。睨めつけながらも言うと。
「うっせえな、持ってろ」
図々しくも答えを返さずあたしにコンビニ袋を押し付けてくる始末。ヒラリとあたしの前に跨ると、また再びバイクを発進させた。
ちょっとちょっと君ね。
「煙草買ってきたんじゃないだろうねー!」
「ああ?聞こえねえよ」
「だから、たーばーこー」
「煙草なんて買ってねえよ」
あら、それは以外。じゃあいったい何を?
「冷やすもの、いるだろ」
言われて片手はしっかりと翼の腰に回したまま、コンビニ袋の中身を確認した。カサリと音をたてたその中には冷えピタがーーーーもしやこれはあたしに…か?
「…これ…あたしに?」
「俺は使わねえけど、使いてえなら使え」
「…何それ、素直じゃない」
「はあ!?何か言ったか!」
「ぎゃあっ!こっち振り返らないで真っ直ぐ前見て!」
こちらに振り返った翼の後頭部に手をかけて、グリンと前に向かせる。危ない、びっくりした。
「馬鹿じゃないのか!危ないだろ!」そう後ろから声をかけつつも、片手で握り締めたコンビニ袋に力が入る。
素直に嬉しいと思った。分かりにくいけど心配してくれていたのかな、そう思ったら不覚にもこんな状況なのに口元が緩みそうだった。