それを受け取ろうと歩み寄ると「待て待て」と翼に静止される。



「買い物袋は預かった。大人しくバイクに乗らねえと返さねえ」


「何だその地味なイジメ!」


「優の家の近くまで送ってやるから乗れ。」


「何でだ。平気なのに、いつも歩いて帰ってるんだよ?」


「顔見られた事忘れてんのかよ。危ねえから乗ってけ。」



自分のバイクを顎で差した翼が、空のバイクにかかっていた買い物袋を持ち上げて「ほら」それを揺さぶってあたしを呼ぶ。まるで餌に釣られてる気分なのだが、渋々とバイクに近寄ると買い物袋はシートの中に押し込まれた



「悪いけど、俺らも行かなあかんから…翼頼んだで」


「へいへい、しっかり送り届けさせていただきますよ」


「つーちん転んだらぶっ飛ばすからな」


「俺が転ぶわけねえだろうが!」




買い物袋と入れ替わりに出されたヘルメットがあたしに投げられる。慌てて両手でキャッチすると優が「はい」それを横から奪い取り、丁寧にあたしの頭へと被せてくれた。



おずおずと翼が腰掛けた後ろに腰を落とす。グン、勢いよく前に走り出しそうになったバイクに慌てる。ちょっと待たんか!!




「待って待って!あたしバイク恐怖症なの!!」


「そんなのあるわけねえだろ」


「いやあるんだって、あたしがそうなんだって!ちょっとお待ち下さい。心の準備が必要だ」


「心の準備はいらねえから、手回せ」


「…手?」


「腰に!じゃねえと落ちるだろうが」




おお、それはそうだった。それは勘弁していただきたい。翼の腰に両手を強く絡ませる。男のくせに細い腰に驚いた。お前さん、あたしに喧嘩売っていますよね。何だこの細腰このやろ。





文句の一つでも言ってやろうとしたが、そんなもの待ってくれるはずも無く。強く両手を絡ませた所で一気にバイクが走り出した。