「ええから頭上げろや。お前らは悪く無い…やけど愛理ちゃん」


「は、はい」


「愛理ちゃんも愛理ちゃんやで、一人で突っ走って行って。俺らが間に合ったからええものの、間に合わんかったらどうするつもりやったん」


「それは…それは、ヒーローさながらにヒラリとお助けを」


「こんな細い腕で?」



優があたしの腕をぎゅっと掴む。少しだけ痛い。



「ねえ、振りほどける?振りほどけんやろ?」



優の手がグルリとあたしの腕を覆う。自分の腕を強く引き寄せてみる。確かに簡単には振りほどけそうに無かった。優が言いたい事は分かってる、良く分かってる。でもーーーーだからって。




「あたしはあの時見逃したり出来なかった。」


「俺達を待ってた方が安全やった。怪我する事も無かったやろ」


「自分の身だけ守って誰かが助けを求めてるのに目を瞑る事なんて出来ない」


「愛理ちゃん」


「優も出来ないはずだ、絶対に!」



優は出来た?同じ状況だったら助けが来るのを待ってた?ううん、絶対出来なかった。あたしと同じ行動を取ったでしょ。あたしもそれと同じなんだよ。



「分かってる。迷惑かけた、でもでもっ、ここで待ってたらもっと後悔してたよあたし」


「……」


「…はいはーい、まあまあ落ち着いて落ち着いてお前ら。」



譲れない気持ちが互いにあった。だから二人で視線を鋭く止めたまま見つめ合っていると、間にするり空が割り込む。



あたしの顔面と優の顔面をそれぞれペチン、片手で押さえ引き離す。空さん、もう少し優しくしてもらえないだろうか。



せめてもう少しね。