まだ恐怖は拭えきれていないからかカタカタと震える体が可哀想で仕方ない。怖かっただろうな。最悪な事態にならなかった事が救いだけど、それでも凄く怖かっただろうな。




「…お姉さん、その傷誰にやられたんだ?」



煙草を一本、気怠げに咥えた空が沈黙になる前にと重要な話を促した。


あたしは翼の片手に手を添えて「もう大丈夫」そう言いながら翼の片手を頬から離す。何となく、ジンジンとした熱に加えて違う熱が上がってきたような気がして。



「誰だか知らないし。会った事も無い人だった」


「だろうな。じゃあどんな奴だった?」


「どんな奴…」


「愛愛は女の子なんだぞ。他の奴はどうでもいいけど愛愛に傷を負わせた奴は俺が許さねえからな」


「隼人」



隼人くん、君の後ろにもう1人女の子いるでしょ?一瞬、隼人くんの言葉に凍りついたあたしよりも早く、空が嗜めるように隼人くんの名前を呼ぶ。



気づいてはいたのか「ふん、」口を曲げて隼人くんが一度押し黙った。びっくりしたじゃないか、心臓どっきどきだよ。



「どんな奴…6人くらい居た。その中で指示を出してる奴が一人、えっと…黒髪のメガネかけてる人だったけど」


「そいつにここを?」


「……」


「殴られたんやな」


「優さん、殴られたじゃなくて叩かれたと言います」


「同じやろ」


「いやいや、同じじゃ…」


「俺の不注意です。すみません。杏(あん)はきっと俺の彼女だから襲われたんだと思うっス。愛理さんまで危険な目にあわせちまって、本当にすいません」



トシに続き彼女までも慌ててあたしに頭を下げて「ごめんなさい」謝ってくるけど二人共全く悪く無い。悪いのはあの卑怯な奴らだ。